生理痛がひどいと日常生活が、辛く楽しくない時間を過ごすことになります。この生理痛の症状は人によって様々ですが、生理(月経)の期間に女性の身体で起こるホルモンバランスの変化や、血行不良によって生理痛は発生します。生理痛の改善には、痛みのみを取り除く対処療法と痛みの根源を改善し、症状の発生を無くす根本治療があります。漢方薬治療は生理痛の根源を改善し、症状の緩和ならびに生理痛その物を根本的に解決する療法です。

この記事では、多くの女性の悩みである生理痛の解説と解決方法をシェアさせて頂きます。

 

 

 

1.生理(月経)痛とは

生理痛は月経間際から月経終了までの間に、女性の身体が目まぐるしく変化することで起こる、痛みなどの不快な症状のことです。生理痛は「痛みの程度・痛む場所・他症状」など、同じ女性であっても百人百様で、一人一人が別々の生理痛を経験しています。

生理痛の症状

「生理前の症状・生理前半の症状・生理後半の症状」と3つの段階で様々な症状が表れます。

段階的に症状が起こる理由はこの期間に分泌されるホルモンの変化などによって、女性の体内環境が変わっていくからです。

その体内環境の変化に伴い、腹痛が起こったり、イライラするなどの症状が発生します。

 

 

生理前の不快な症状

女性は排卵を迎えると、女性ホルモンの一つである黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が急激に増加します。

そして、排卵した卵子が受精しなければ生理が起こり、一気に黄体ホルモンは減少します。

これらの一連の生理サイクルで起こる大きな変化によって、身体の状態をコントロールする自律神経がバランスをくずし「イライラ・倦怠感・頭痛・胃痛」などの不調が表れます。

また、黄体ホルモンは、女性の身体から母親の身体への変化を促すので「乳腺の発達・体温の上昇・水分代謝の悪化」などの身体の変化を起こし、乳房が痛みや、だるさや下半身のむくみが表れやすくなります。

この、生理の1~2週間前から生理が始まるまでに表れる不快な症状は「月経前症候群(PMS)」と呼ばれています。

 

 

生理前半に起こる症状

生理の直前から前半で、プロスタグランジンという物質が急に増加します。プロスタグランジンの働きは、子宮の収縮を促して経血を身体の外に排出することです。

この子宮収縮が強いと、下腹部に「キリキリとした痛み=生理痛」が発生します。また、血管を収縮させる作用もあるので「腰痛・だるさ・冷え・めまい」などの症状も起こります。

さらに胃腸の動きにも影響を与えるので「吐き気・下痢」の症状が表れる方もおられます。

 

 

生理後半に起こる症状

経血の排出がある程度終了すると、プロスタグランジンの分泌量は低下し、キリキリという痛みは落ち着きを見せます。

しかし、身体からは多くの血液が失われているので、骨盤付近を中心に血液の循環が滞り「下腹部の鈍痛・腰回りのだるさ・冷え・むくみ」などの症状が表れます。

 

 

 

日常生活に支障きたす月経困難症

鎮痛薬を服用しても症状が改善しない、または日常生活に支障が出るほどの症状は、月経困難症かもしれません。

月経困難症には、「機能性月経困難症:病が原因で起こらない生理痛」と「器質性月経困難症:病が原因で生理痛が発生する」の2種類があります。

器質性月経困難症は「子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症」などの子宮の病気が原因で起きる生理痛なので、疑わしい場合には必ず婦人科を受診し、適切な治療を受けて下さい。

 

 

 

 

 

2.生理痛の原因

生理痛の原因は「血行不良・ストレス・代謝異常」など多義に渡ります。そして生理痛自体を発生させるものはプロスタグランジンという成分です。生理痛はプロスタグランジンに対して複数の要因が重なることで発生する不定愁訴です。

 

 

プロスタグランジンの分泌

生理中は、子宮を収縮させ、はがれ落ちた子宮内膜を血液とともに「経血」として体の外に押し出す働きをする「プロスタグランジン」が分泌されます。

この成分の生産と排出のバランスが悪いと、子宮の収縮が過剰に起こり、陣痛のような下腹部の痛みを生み出します。

そして、プロスタグランジンの一種には、「痛み」その物を作り出す働きがあるので、頭痛や腰痛の原因にも成り得ます。

 

 

 

冷えなどを起こす血行不良

血液の循環が悪くなると、身体が冷えてしまいます。血行不良は、生理痛の直接原因となるプロスタグランジンが骨盤内近辺に滞留しやすいので、痛みが強くなります。

さらに生理がはじまると、プロスタグランジンの働きで血管が収縮するので、血液の流れが悪くなります。

つまり、血行不良によるプロスタグランジンの滞留が、更なる血行不良招くという悪循環を作り出し、強い生理痛を生み出してしまいます。

「冷えは万病の元」という言葉の通り、血行不良は様々な不調を招きます。生理痛を含む多くの不定愁訴は、血液循環の悪化が根本的な原因になることが多いのです。

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日常生活環境

日々の生活を送る環境下にも、血液の流れを悪化させ、血行不良を起こす要因はたくさん潜んでいます。

「冬場の薄着・冷たい飲み物/食べ物・運動不足・冷房・シャワー」などの直接身体を冷やす行為は、交感神経が優勢な状態を作り出します。

交感神経が優位に働くと、血管は収縮し、血液の流れが悪化するので身体が冷えてしまうのです。

 

 

ストレス環境

ストレスの蓄積は、交感神経と副交感神経から成る自律神経のバランスを崩し自律神経の失調を導きます。

自律神経の失調では交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることで、血液の流れに悪影響を与えてしまい、生理痛を強めます。

また体温調節の機能なども低下させるダイレクトに冷え症の原因にも成り得ます。

 

 

 

 

 

3.一般的な生理痛の対処療法

病院などの医療機関では、生理痛に対して症状のみを改善する「対処療法」が行われます。対処療法に使われるお薬は痛みの成分の生産を低下させる「鎮痛剤療法」と「低エストロゲン・プロゲスチン配合薬です。

 

 

薬物による対処療法

生理痛に対する西洋医学の治療は、痛みの元となる成分やホルモンを抑制する薬物療法が中心です。

痛みを発生させる生理活性物質を抑えることで一時的に痛みを取り去る「対処療法」がメインとなり、血行不良を改善する治療などは行われません。

 

 

鎮痛剤療法「NSAIDs」

この鎮痛薬には、生理痛の元となるプロスタグランジンの産生を抑制する働きがあります。

下腹部の痛みに対しては大変よく効きますが、ほかの不快症状には効果が薄いです。

また、人によっては副作用として胃腸障害「炎症・潰瘍」を起こすこともあるので、注意が必要です。

 

 

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬「LEP製剤」

卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲスチン)の2つの女性ホルモンが含まれています。

排卵を一時的に抑制することで、生理痛やその他の不快症状を緩和します。

ただ「軽い頭痛・軽い嘔気・少量の不正出血」などの副作用が起こることがあり、さらに大きな副作用として、血栓症(静脈血栓症・動脈血栓症)があります。

血栓症が起こる頻度は低いですが、重篤な状況を招く恐れがあるので、厳重な注意が必要です。

 

 

 

 

 

4.漢方で生理痛の根原を改善する

数千年にも及ぶ漢方治験の中で、生理痛の原因は血行不良と診断されています。漢方を用いた治療では、生理痛の根本的な原因である血液の「流れ・状態」を見直すことで、生理痛が起こらない身体の状態を目指します。

 

 

漢方医学による生理痛治療

生理痛の大きな原因は「血液の循環」にあることは西洋医学でも東洋医学でも同じ結論が出ています。

病院などの西洋医学では、症状を抑える対処療法が主流ですが、漢方では生理痛の根源である「血行不良」を改善し根本治療を目指します。

漢方医学では、血液の循環の悪化の原因を「血液が滞る:お血」と「血液の量が少ない:血虚」と考えています。

血液の流れが滞るお血の原因は、自律神経と血液の質が大きく関わっています。自律神経に問題がある場合は、自律神経のバランスを整える漢方薬を処方します。

そして血液の質=ヘモグロビンの状態が悪い場合は、ヘモグロビンの新陳代謝を高める処方で改善します。

また、血液の量が少ない場合には血液の増やす生薬や食生活のアドバイスを行うことで改善を促します。

 

 

生理痛に使われる漢方薬

生理痛に使われる漢方薬の一例を、ご紹介致します。下記の漢方処方は、あくまでも一例であり、全ての人に当てはまるものではりません。

漢方の神髄は、その方の病状と身体の状態に合わせて処方を選ぶ事です。

  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
    標準的な体力の方に使われる漢方薬で、のぼせによる便秘症状をお持ちの方の月経困難症、月経痛などに効果を発揮します。

 

  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
    体力があり身体が強い方向きの漢方薬で、のぼせによる末端の冷えなどがある方の月経不順、月経異常などに使われます。

 

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
    虚弱体質の方に使われる漢方薬で、冷え症で貧血の傾向がある方の月経異常、月経痛などに効果があります。

 

  • 温経湯(うんけいとう)
    やや虚弱体質よりの方に使われる漢方処方で、手足がほてったり、唇がかわく方の月経不順、月経困難などに効果があります。

 

  • 加味逍遥散(かみしょうようさん)
    標準的な体力の方に使われる漢方処方で、のぼせを有し精神が不安定、いらだちのある方の月経不順、月経困難などに効果的です。

 

 

 

漢方では他の不快症状も改善される

漢方で生理痛を改善する場合、生理痛の根源となる「血液」の問題を解決することに
なります。

「冷えは万病の元」と言われる通り、血行不良は様々な不調をもたらし、全ての不定愁訴に繋がっています。

数千年にもおよぶ漢方治験で、血液の問題は全ての病に通ずることが分かっているため、東洋医学では血液の状態の改善に心血を注ぎます。

漢方治療によって血液の流れや血液の質が改善されると、生理痛の改善と同時に、今まで抱えていた様々な不調が改善されたと喜ばれるお客様が非常に多いです。

もし、つらい生理痛でお悩みの場合には、一人で問題を抱えずにお気軽にご相談くださいませ。